桑畑巌達の教育言論

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教育は人なり

なぜ教育なのか?


 教育の必要性について、なぜ今になって語っていこうと思ったのか。

 それはここ数年の間で、日本の中高生の勉強離れを痛感しているからだ。そして、勉強離れにより教育への関心はますます薄れ、日本の将来が危ぶまれると懸念している。資源に恵まれない我が国は、これまで教育を通じて人材育成を充実することを何より優先してきた。その賜物が高度経済成長に始まる我が国の発展である。しかし、先進国に追い付け追い越せと躍起になったことによって、失ったものも確かにあった。それは心のゆとりである。その結果、他人を押しのけてでも自分がのし上がるようなエゴイスティックな風潮が蔓延ることとなる。これを受けて、1970年代に日本教職員組合 (日教組) が「ゆとりある学校」案を提起した。国営企業の民営化を推し進めた第2次中曽根内閣の主導のもとにできた臨時教育審議会(臨教審)で、「公教育の民営化」という意味合いも込めて導入され、 これを受けて、文部省や中教審が「ゆとり」を重視した学習指導要領を導入するに到った。2002年度(高等学校は2003年度)から本格的に施行されることとなった学習指導要領による教育が、俗にいう「ゆとり教育」と呼ばれるものである。知識重視型の教育方針を詰め込み教育であるとして学習時間と内容を減らし、経験重視型の教育方針をもって、ゆとりある学校づくりをめざした。しかし、ゆとり教育は結果として学力低下をもたらすこととなり、修正を余儀なくされる。実際、教育コンサルタントによると、過去に出題された同一問題の正答率を比較した結果、読解力、科学的リテラシー、数学的リテラシーのすべてにおいて、PISA型学力が下がり続けていることがわかっている。

 国際的な大競争時代の今日、どの国においても義務教育の質の保証・向上が国家戦略の中核に据えられている。我が国においても、諸外国に遅れをとることなく、世界最高水準の教育を目指し、人材育成の基盤である義務教育の質の向上に国家戦略として取り組む必要がある。そして、専門・技術を持って社会で活躍できる人材を一人でも多く育成することが教育の大きな役目であり、使命なのかもしれない。教育について今一度、再考し、再興を促していきたい。



 ⓒ桑畑巌達







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